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『君の名は。』 〜社会に出ないで世界を救う若者たち〜

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    「君の名は。」が流行っていると聞いて、新海誠監督の作品をいくつか観たのだけど、最初は受け入れ難かった。
    「セカイ系」と言うらしい。いわく、「君」と「僕」の愛があれば「世界」を救うことができる、ということ。しかし、「僕」と「君」と世界の間には、まず「社会」がずっしりと横たわっているし、未熟な「僕」が、理想の「君」に出逢うためには社会に踏み出さなければならない。引きこもりの「僕」に、美少女の「君」と出逢うチャンスなどないし、ましてや「世界」を救うヒーローになることはありえない。「社会」という三人称・三次元を超えた先にしか「世界」という時空を超えた四次元に到達するすべはない。セカイ系は三人称・三次元をすっ飛ばして二次元から四次元に向かう。新海誠作品がちょっとずるいなと思うのは現実「社会」をストーリー上は無視しながら、その描写の中には、新宿駅や常磐線など社会の象徴の風景を微細に描くことであたかも社会との絡みがあるような演出をしていることだ。作中には友人も家族さえもほぼ出てこないのに。。
    というわけで、うーん、これはキモいぞと思っていたのだが、はたと改めて考えてみると、よりグロテスクなのは「社会」の方かもしれないと思いあたった。僕は、学生の相談には就職を勧めず、お金と健康の問題を抱えた会社勤めの友人には即時退職を勧めて来た。会社に就職するのは、まずは手に職を、あるいは信用を、という理由からだろうが、90%の会社では手に職がつくことなどない。旧世代の産業システムのやり方や会社の独自文化を身につけることは市場価値からいえばリスクにもなりうる。一方で社会的信用を担保できる会社はせいぜい3-5%であろう。三井、三菱など商社の一部と尊敬される世界的企業だけだ。だから就職活動の最善手はこのような会社に内定し半年から一年で退職することだったりする。
    本当に手に職を、と思うなら学生時代から、バイト→業務委託→自分の会社設立→自分の組織作りへと、出世魚のように主体的にキャリアを作るほうが良い。
    加えて、親世代が言うように「就職が安定をもたらす」かと言えばそれはない。3年で1/3は辞め、5年で半分以上が辞める。辞めるだけならいいが、実態は病んで辞めることが多く、するとあとの人生が低空飛行になることもあり、むしろ長期的視点では生活は不安定になるであろう。ならば最初から上意下達で自由度のない就職よりも、不安定飛行ながら時間と人との距離感を自由に選択できる健康的自立を選ぶ方が長期的には安定するのではないか。どうせ80%の人は35歳までに会社を去って自立するのが現実なのだから。日本社会は過酷である。コミュニケーションとは「距離感のマネジメント」だと僕は思うが、学生時代に親しい友人は平均3-5人なのに会社に入った途端、世代も価値観もまだらな50人以上に膨れ上がり、過去のコミュニケーション・テンプレートは役に立たない。少しづつ調整していくことも今の社会環境では難しい。日本財団の調査によれば1/4の若者が一度は自殺を考える時代である。であるならば、むしろこのグロテスクな社会から距離を置き、自分のペースで調整を図ることのほうが適切だ。新海誠や「セカイ系」が人気を集める理由もわかろうというものだ。
    というわけで、今から「君の名は。」を観てくるよ。長い理屈でしたm(__)m


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