2010.05.10 Monday
IFRSの本質とその限界
IFRSの特集をよく見掛けるようになった。私も記事やコラムを担当することが多い。
ここではIFRSの“意味合い”を端的に書きたい。(細かいルールについては別のコラムを参照に詳しいし、まだ未確定の部分も多い)
まず、そもそもの会計についての誤解から。
日本では、B/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)、C/F(キャッシュフロー)の三つをもって財務三表とし、“三位一体”としてみるが、これがそもそも間違いである。
「P/L,B/S」と「C/F(キャッシュフロー)」の二つは根本的に異なる。
キャッシュフローは、その名の通り「現生(げんなま)の動き」であり、「P/L,B/S」は、会計というルールに基づいた企業評価の方法である。
したがって前者は「事実」であり、後者は「意見」である。
よく会計ルールが変わる時に、キャッシュフローが注目されるが、それは会計がよくわからなくなるので、では事実に戻ろうという動きなのだ。今回のIFRSでも同じようにキャッシュフローが注目されているが、これは常に起こる新しい会計(というルール)を否定する動きでもある。
さてそのIFRSだが、2つのポイントがある。
一つは「P/Lの失脚」、もう一つは「事業と財務の分離」である。
過去、P/L(利益)は、ことごとく投資家を裏切ってきた。
P/Lと、B/Sの関係は、本来、P/Lが、ある期間の成果(フロー)、B/Sが、ある時点の状態(ストック)を表し、両者が組み合わさって企業を表現している。
しかし、ある期間の成果である(P/L)の“お化粧”をするために、B/Sにしわ寄せをすることが通例であった。例えばのれん代(無形資産)という名の実態のない資産の計上、それから売掛金や在庫などの過剰計上である。本来、費用として計上すべき項目をB/Sの資産に計上して、P/L(利益)を底上げすることが粉飾の常套手段だった。これまでは、P/Lを見ても「ある期間の成果」は、“正しく”表現されることがなかった。
であれば、どうすればいいのか?
答えは、簡単である。B/Sに“ウミ”が貯まるのであれば、B/Sを使って成果を把握すればいいのだ。「現在の状態」から「過去(1年前)の状態」を引けば、一年間の成果が出るではないか?つまり、B/Sの差分を取れば、もれなく成果を見ることができるということである。
現在のストック − 過去のストック = 成果(フロー) ということだ。
この考えに則ってIFRSでは包括利益という概念が適用される。これは元来のP/LとB/Sをミックスして、期間成果(多くは年間成果)を表現したものである。これによって、今までB/Sにしわ寄せしてきた(あるいは簿外に負債を飛ばしていた会社)は、損失計上を余儀なくされることが増える。まぁ、無形資産や不可思議な固定資産は費用化されるので、利益が下がるということだ。
そもそもB/Sや簿外を読み飛ばす投資家も怠慢だが、“包括的”に期間成果を追えない会計も問題であった。IFRSはこの問題をある程度は解決する。しかし、市場を騙す経営者と投資家のいたちごっこは、さらに複雑になるだろう。これはコンピュータウィルスの世界も財務会計の世界と変わらない。
2つめのポイント。
それは「事業」と「財務」の分離である。
企業活動とは、通常、調達→投資→回収→還元の4つのサイクルで行われる。「調達」と「還元」が財務活動であり、「投資」と「回収」が事業活動である。
日本では調達や還元(配当や株価対策)よりも、事業活動による内部的な投資と回収が重視されてきたが、今回、「財務」の生産性が一目瞭然となることで、経営者の市場対話能力(IRや資本政策)が更に問われることは間違いない。
また事業についても、事業領域(セグメント)毎の開示がより進むことにより、これまでのような企業間の比較ではなく、他業種企業でも同じ事業であれば比較されることが増え、事業の売買(M&A)も加速するようになるだろう。
実は企業比較や事業比較は、IFRSという統一ルールだけでなく、XBRLという統一の会計情報流通システムによっても加速する。IFRSという「言語」とXBRLという「流通システム」の両輪が、世界規模での企業間の比較、投資家獲得の熾烈な競争を加速することは間違いない。
IFRSとXBRLによって企業実態の詳細把握と比較可能性が高まることで、世界統一市場が出来るようになるともはや地方の市場は存在意義を失うだろう。
「市場」は明らかに新しいステージ(世界統一市場)へと進化しようとしている。だが、それと同時に、21世紀にふさわしい市場に変わる新しい金融システムが生まれようとしているのだ。それは個人レベルの想いやコミットメントが“編み込まれた”金融商品の発明なのである。その意味において私自身は、IFRSやXBRLのような現市場をサポートするシステムでなく、Donational investment(寄付的投資)や、企業通貨・個人通貨などの新しい信用創造システムの構築に関心がある。
ここではIFRSの“意味合い”を端的に書きたい。(細かいルールについては別のコラムを参照に詳しいし、まだ未確定の部分も多い)
まず、そもそもの会計についての誤解から。
日本では、B/S(貸借対照表)、P/L(損益計算書)、C/F(キャッシュフロー)の三つをもって財務三表とし、“三位一体”としてみるが、これがそもそも間違いである。
「P/L,B/S」と「C/F(キャッシュフロー)」の二つは根本的に異なる。
キャッシュフローは、その名の通り「現生(げんなま)の動き」であり、「P/L,B/S」は、会計というルールに基づいた企業評価の方法である。
したがって前者は「事実」であり、後者は「意見」である。
よく会計ルールが変わる時に、キャッシュフローが注目されるが、それは会計がよくわからなくなるので、では事実に戻ろうという動きなのだ。今回のIFRSでも同じようにキャッシュフローが注目されているが、これは常に起こる新しい会計(というルール)を否定する動きでもある。
さてそのIFRSだが、2つのポイントがある。
一つは「P/Lの失脚」、もう一つは「事業と財務の分離」である。
過去、P/L(利益)は、ことごとく投資家を裏切ってきた。
P/Lと、B/Sの関係は、本来、P/Lが、ある期間の成果(フロー)、B/Sが、ある時点の状態(ストック)を表し、両者が組み合わさって企業を表現している。
しかし、ある期間の成果である(P/L)の“お化粧”をするために、B/Sにしわ寄せをすることが通例であった。例えばのれん代(無形資産)という名の実態のない資産の計上、それから売掛金や在庫などの過剰計上である。本来、費用として計上すべき項目をB/Sの資産に計上して、P/L(利益)を底上げすることが粉飾の常套手段だった。これまでは、P/Lを見ても「ある期間の成果」は、“正しく”表現されることがなかった。
であれば、どうすればいいのか?
答えは、簡単である。B/Sに“ウミ”が貯まるのであれば、B/Sを使って成果を把握すればいいのだ。「現在の状態」から「過去(1年前)の状態」を引けば、一年間の成果が出るではないか?つまり、B/Sの差分を取れば、もれなく成果を見ることができるということである。
現在のストック − 過去のストック = 成果(フロー) ということだ。
この考えに則ってIFRSでは包括利益という概念が適用される。これは元来のP/LとB/Sをミックスして、期間成果(多くは年間成果)を表現したものである。これによって、今までB/Sにしわ寄せしてきた(あるいは簿外に負債を飛ばしていた会社)は、損失計上を余儀なくされることが増える。まぁ、無形資産や不可思議な固定資産は費用化されるので、利益が下がるということだ。
そもそもB/Sや簿外を読み飛ばす投資家も怠慢だが、“包括的”に期間成果を追えない会計も問題であった。IFRSはこの問題をある程度は解決する。しかし、市場を騙す経営者と投資家のいたちごっこは、さらに複雑になるだろう。これはコンピュータウィルスの世界も財務会計の世界と変わらない。
2つめのポイント。
それは「事業」と「財務」の分離である。
企業活動とは、通常、調達→投資→回収→還元の4つのサイクルで行われる。「調達」と「還元」が財務活動であり、「投資」と「回収」が事業活動である。
日本では調達や還元(配当や株価対策)よりも、事業活動による内部的な投資と回収が重視されてきたが、今回、「財務」の生産性が一目瞭然となることで、経営者の市場対話能力(IRや資本政策)が更に問われることは間違いない。
また事業についても、事業領域(セグメント)毎の開示がより進むことにより、これまでのような企業間の比較ではなく、他業種企業でも同じ事業であれば比較されることが増え、事業の売買(M&A)も加速するようになるだろう。
実は企業比較や事業比較は、IFRSという統一ルールだけでなく、XBRLという統一の会計情報流通システムによっても加速する。IFRSという「言語」とXBRLという「流通システム」の両輪が、世界規模での企業間の比較、投資家獲得の熾烈な競争を加速することは間違いない。
IFRSとXBRLによって企業実態の詳細把握と比較可能性が高まることで、世界統一市場が出来るようになるともはや地方の市場は存在意義を失うだろう。
「市場」は明らかに新しいステージ(世界統一市場)へと進化しようとしている。だが、それと同時に、21世紀にふさわしい市場に変わる新しい金融システムが生まれようとしているのだ。それは個人レベルの想いやコミットメントが“編み込まれた”金融商品の発明なのである。その意味において私自身は、IFRSやXBRLのような現市場をサポートするシステムでなく、Donational investment(寄付的投資)や、企業通貨・個人通貨などの新しい信用創造システムの構築に関心がある。
